Activities Overseas Reports

渡航報告:スイス・University of Zurich (Ueli Grossniklaus Lab)

IKEDA Yoko (Okayama University)

Sep. 2, 2025

2025年7月最終週~2週間半の間、スイス・University of Zurich のUeli Grossniklaus 博士のラボに滞在し、ゼニゴケを用いたレーザーマイクロダイセクション法による遺伝子発現解析の実験を行いました。

Grossniklaus 博士のラボはチューリッヒ中心部の大学の植物園にあるビルディングのほぼ1フロアを占めていて、数十人規模の大きなラボです。植物園はドーム型の温室を3つ備え、展示や管理が行き届き、植物や森に囲まれた落ち着いた環境で研究を行うことができました。博士のグループは以前からレーザーマイクロダイセクション法を用いた解析を盛んに行なっており、今回私が対象としているゼニゴケの解析も得意としているため、KEPLRを利用し共同研究で訪問する機会を得ることができました。

実験では、久しぶりに扱うミクロトームに最初苦労しましたが、全自動のパラフィン置換装置や、最近導入されたレーザーマイクロダイセクション用顕微鏡などの機器を活用し、効率的に研究を進めることができました。限られた滞在期間のため、今回の目的である組織サンプルを十分に集めるには至りませんでしたが、ゼニゴケを用いた実験方法を学び、実際にどの程度の労力が必要かを体感することができ、大変有意義な滞在となりました。また、実験だけでなく、アフターファイブでは、植物園所属ラボ全体でのバーベキューや卓球などを通じて研究室の方々と交流する機会にも恵まれました。

チューリッヒ滞在中は、KEPLRによる訪問滞在者用として、同大学の清水健太郎博士のラボの方々が滞在している家の一室が確保されており、そこを宿として利用させて頂きました。チューリッヒ市街地近くの川沿いの自然豊かな住宅街に位置しており、空気も澄んでいて、大変リフレッシュすることができました。一方、生活面では、スイスフラン高+円安の影響により、物価の高さに悩まされた(大学の食堂の昼食が3000円、ビッグマック1つが2000円でした!)こともご報告しておきます。

今回の訪問で、研究・交流・生活において、多くの新しい経験を得ることができ、大変充実した滞在となりました。今回KEPLRでこのような機会を与えてくださったことに感謝しています。今回学んだことを今後の研究に活かしていきたいと思います。

Author

IKEDA Yoko (Okayama University)

  • Associate Professor
  • Kohchi Group
  • Kyoto University

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KEPLR Room利用体験記

OKAMOTO Fumika

Aug. 30, 2025

名古屋大学理学研究科の岡本奎花です。2025年6月に1週間ほどチューリッヒに滞在し、清水健太郎教授、Ueli Grossniklaus教授、Cyril Zipfel教授の研究室を訪問した際にケプラールームを利用しました。

チューリッヒ国際空港から電車で30分ほど揺られると最寄り駅に到着します。白壁の一軒家がシェアハウスとなっており、三階の一室がケプラールームです。駅からは徒歩10分ほどで、駅の近くにはバス停もスーパーマーケットもあり、便利な立地です。チューリッヒ大のキャンパスへは1時間ほどです。また、近くには川が流れており緑も多く、自然の豊かさを感じられる素敵な場所です。昼間は鐘が鳴り響いて時間を教えてくれます。

部屋にはデスクとベッド、ハンガーラックがあり、不自由なく過ごせました。また、私が滞在したときは暑い時期だったため扇風機も用意してくださいました。

ケプラールームの様子(左)ベッドと扇風機(中央)ハンガーラック(右)デスク

共用のスペースとしてキッチンとダイニング、そしてバスルームがあります。キッチンには冷蔵庫、食洗機、電子レンジ、そして炊飯器がありました。ダイニングからは庭に出ることができ、何度か近隣の猫ちゃんと遭遇しました。バスルームにはシャワーブースに加え洗濯機と乾燥機があり、さらには広い洗面台もありました。

キッチンとダイニングの様子(左)キッチン(中央)ダイニング(右)庭に来た猫ちゃん

基本的な物価が日本よりも高く、特にレストランや出来合いの料理は高価なため、自炊をするのがお財布に優しいと思います。私は非常に短期の滞在であったため、ほぼサラダとパンを食べて過ごしましたが、近くのスーパーには米なども売っていました。

チューリッヒは治安も良く、駅からの道も街灯が煌々と照らしているため、日が落ちた後の帰宅でも不安はありませんでした。非常に過ごしやすい街だと感じました。1週間という非常に短期の滞在でしたが、とても充実した時間を過ごすことができました。

渡航を決めたのが急であったにもかかわらず、ご対応してくださった土金勇樹先生と高橋太郎さん、そしてシェアハウスに滞在されている皆様に感謝申し上げます。また、研究室訪問に際し、ご対応してくださいました皆様にお礼申し上げます。

Author

OKAMOTO Fumika

  • Sato Group
  • Nagoya University
  • Environmental Responses
  • Imaging

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ウィーン渡航記1 ~海外渡航のTips~

NAKAO Hiromu

Sep. 28, 2025


まえがき

東大・土松研D1の中尾です。
今年春からウィーンのFred研に滞在していて、今後2年ほど留学予定です。
渡航報告に先立って、これから来る方に向けて家探しのコツや現地の実感を共有します!
参考になれば幸いです。


もくじ

長くなってしまったので、項目ごとに分けました
読みたい項目タブを押すと開きます↓

必須事項

必須ではないもの


ひっこし

一緒にもっていく

渡航の期間・どれくらいものをもっていきたいかによりますが、基本的には搭乗する飛行機の預け荷物(便にもよりますが、ANAなら23 kg×2 +機内持ち込み10 kg)で足りると思います。
空港には大型荷物用のカートがありますが、宿と空港の間の移動手段は考えておきましょう。
僕は結構量が多かったので、日本では友人に空港まで車で送ってもらい、ウィーンに着いてからは宿までタクシーで行きました。
ダンボールで運ぶ場合は、ラップでグルグル巻きにしておくと安心です。

国際郵便

時間とお金がかかりますが、忘れたものがあったり、もちものが多すぎる場合には郵便局から郵送することができます。
注意点として、サイズの大きなもの(楽器、スキーなど)は郵送できません!
渡航するときにもっていきましょう。
特に、オーストリア航空はスキー用品一式を追加料金なしで輸送してくれるので助かりました。

  •   トータルで70 kg弱でした笑

家探し

どうやって決める?

Housing Anywhereというサイトなどで渡航前に宿を決めてしまうこともできます。
ただし、Housing Anywhereはプラットフォーム業者に手数料を支払うため同じ物件でも現地で大家さんと直接契約した方が安くなります。

個人的には内見せずに決めたくなかったので、出国前に最初の2か月分だけ短期用のアパートを確保し、現地に着いてから長期の物件を探しました。

大学や研究所のメーリングリストでいい物件が見つかればそちらで取ってしまうのがおすすめです。

安い物件は流れてこなかったため、私はWillhabenというサイトで探しました。

どれくらい大変?

ウィーンは物件は豊富にあるのですが、良い物件は希望者が多く、競争は激しいです。
選ぶ側であると同時に、選ばれる側であることを意識しましょう。
今の家の契約書にサインしたとき、大家さんから「60件の内見希望メールから5人の候補者を選んで、内見を経て君にしたよ」と言われました。

私の条件、物件を決めるまで

  • 家賃:€500/月くらい(共益費込)(かなり安い部類)
  • 研究所まで自転車15分以内

条件を満たす物件100件程度にメールを送り、そのうち返信があった40件ほどの中から15件を内見しました。
はじめはあまり返事がなかったのですが、その物件にとても興味があること、日本人であること(大事!)、安定した収入があることを書くと返信が来るようになりました。
競争率の高い物件は内見の際にある程度好印象を残せないと契約書をもらうことができないので、とにかく場数を踏んで積極性を出せるようになることが大切だと思います。

契約書をもらえても確定ではなく、複数人に同時に渡していることが多いです。基本的には早い者勝ちなので、できるだけ早く決心を固めましょう。多くの物件を見ておくと感覚がつかめて即決できるようになると思います。

ただし、やっと契約書をもらえた!と思っても、きちんと読みましょう(特にシェアハウス)。
具体的には以下のような契約書を見てきました。
・連帯責任(シェアハウス)
他の住民が家賃を払わない場合、その人の分も支払う。
その住民を追い出すには大家とすべての住民の合意が必要である。

・又貸し物件(シェアハウス)
法的な保護がとても弱いです。

・設備の過剰な管理義務(アパート)
借主は水道・ガス・電気設備など、すべての管理責任を負う。パッキン、ヒューズなどを定期的に交換する義務がある。

家具付き物件は修理条件の基準が曖昧なこともあるので、不安があれば明文化を求めましょう。
具体的には、木材が腐って蛇口が陥没しているのにまだ使えると言い張る大家もいました。

さいごに:割り切りも必要

どれだけ慎重に選んでも、トイレが頻繁に壊れる、共用洗濯機やヒーターが落ちるといった話は珍しくありません。
一定程度は運だと割り切ったうえで、トラブルになってもこの大家さんはきちんと対応してくれそうかを意識するようにしましょう。

  •     まだまだ使える蛇口
        ぐらぐらします

住居その他

契約するもの

大抵の場合、家財保険・ガス・電気を自分で契約する必要があります。
いずれもオンラインでできることが多いです。

注意事項

ヨーロッパのトイレは構造上、つまりやすい個体がいるそうです。
見た目では判別できないため、安心できるまではつまった場合に備えておきましょう。

Meldezettel

Meldezettelとは?

日本の住民登録のようなものです。
ウィーンの場合、入居してから3日以内に近くの役所に行ってMeldezettelという申請をする必要があります。
申請をするとBestätigung der Meldungという住民票のような紙をもらえます。
この紙はさまざまなことに使うので、大切にしましょう。

手続き

大抵は鍵の受け渡しの際に、大家さんから半分記入されたものを渡されます。
そこで大家さんに確認してもらいながら残りも記入しましょう。

申請は平日午前中ならたいてい予約なしでできると思います。
また、役所では他にパスポートと電話番号が必要となります。

WISE・銀行

WISEとは?

外国送金・為替を格安でできるサービスで、とてもおすすめです!
日本のクレジットカードも海外で使えることが多いですが、支払い拒否されることもありますし、為替手数料を2%程度取られるため高くなりがちです。
WISEデビットでユーロ口座を開けば支払い拒否されることはまれですし、為替手数料も0.7%程度と安いです。
また、ATMから現金を引き出すこともできます(月2回無料)。
日本の銀行口座から外国の銀行口座に送金する際も国内送金扱いにできるため安くなりますし、受取先のWISE口座を伝えられることも多いためWISEだと楽です。

↓こちらの招待リンクから登録していただくと、無料でデビットカードを作れます!

国境をまたいでの住居変更も柔軟なので、出国前にカードを作り、移動してから住所を変更するのがおすすめです。

銀行口座の開設

Erste銀行の場合、Meldezettelとパスポートさえあれば1日で開設できます。
デビットカードは無料ですが、クレジットカードは年会費がかかります。

SIM契約

eSIM

eSIMの場合、物理的なSIMを必要としないので、出国前にインストールしておけば現地についてからもそのまま使えます。
注意点として、Airaloのような旅行用SIMだと電話番号を継続できないため、最初から現地の電話会社と契約してしまう方がいいと思います。
オーストリアの場合、Georgという格安SIMが月€10で55 GBまで使えるのでおすすめです。

日本の携帯電話番号の維持

日本に帰国することが前提の場合、日本の携帯契約を残しておいた方が都合がよいと思います。ドコモなら携帯の名義を家族に変更すれば非居住者になっても番号を維持でき、irumo0.5G月額550円のプランがおすすめです。
(最近なくなってしまったようです。検索するともっと安いeSIMも出てきますが、まだ調べ切れていません。詳しい方、教えてください!)

VISA

準備

オーストリアの場合、就労するにはVISA Dが必要となります。
Residence permitを取得する際にもVISA Dが必要だったはずです。
渡航先から受入証明(Hosting Agreement)さえもらえれば、すぐに書類は集まると思います。
出発3週間前までに申請しないといけず、大使館が混んでいることもあるので、余裕をもってメールするようにしましょう。

提出書類

  • 申請費
  • パスポート(原本・身分事項のページのコピー)
  • Hosting Agreement
  • 在学証明書
  • レターパックライト430(住所等記入)
  • 4.5×3.5 cmの証明写真
  • フライトの予約証明
  • 宿泊先の証明
  • 滞在期間の保険の証明
  • ビザD申請書

Number of entries requestedはMultiple entriesにした方が無難とアドバイスを受けたので、現地でチェックをつけなおしました。最後の署名と日付は念のため現地で書きました。

  • 資金証明

スクリーンショットの場合は6か月間の出金、入金、取引都度の残高、口座名義人氏名を確認できる必要があるということでした。
また、通帳の写しを提出する場合は申請前7日以内に記帳する必要があるようです。

手続き

在日本オーストリア大使館の方は日本語でとても丁寧に対応してくださいました。
旅行保険に関して誤解があり、書類不備となりましたが、メールでの送信で対応していただけました。書類提出と指紋採取の合計で45分くらいで、待ち時間が長いです。
申請後、VISAが貼られたパスポートがレターパックで返送されます。

滞在許可 (Residence Permit)

準備

日本国内の大使館でもできるようですが、入国後の方が楽だと思います。
必要な書類は以下です。
日本で事前に用意しておかないといけないものが多いです。
時間がかかったり、有効期限がある書類もあるので計画的に集めるようにしましょう!

  • 戸籍謄本

市役所で取得後、外務省に送付してアポスティーユを取得します。
その後、オーストリア指定の翻訳家に依頼して認証翻訳をつけてもらいます。
翻訳家のリストは大使館に問い合わせると教えていただけます。

  • 無犯罪証明書

東京都の場合、警視庁で申請します。
証明書発給の必要性が確認できる書類を提示する必要がありますが、私はHosting Agreementを提出しました。
担当の方はスマホ(Google Lens?)で翻訳して確認しており、ドイツ語のままで問題ありませんでした。
3点の書類と申請用紙の記入と指紋採取の合計で30分くらいでした。
申請後、2週間くらいで書類ができるので、再度受け取りに行きます。
発行後、外務省に送付してアポスティーユを取得する必要があります。
こちらも10日程度かかったと思います。
有効期限が3ヶ月しかないため、気をつけましょう。

  • 賃貸契約書

3か月分以上滞在することが前提の賃貸契約書が必要になります。
滞在できる物件があることを示せばいいので、ここに住まないことになっても大丈夫です。

  • Hosting Agreement
  • パスポート
  • 申請費(後日払い込み、WISEで支払えます)
  • 証明写真

手続き

オンラインで事前に訪問日を予約します。すぐに予約できない場合もあるので、準備が整ったら早めに行いましょう。
英語も意外と通じますし、あまり覚悟する必要はないです。確か受付が2種類に分かれており、BIO(Business Immigrant Office)の方にいけばいいはずです。
申請後、約2週間後の指定された時間にResidence permitのカードを取りに来るように言われます。その時間に予定がある場合はメールをすると対応してもらえます。

健康保険

オーストリアの場合

国により異なるかもしれませんが、オーストリアの場合E-cardというカードを提示するだけで公的保険によりほとんどの医療を無償で享受できます。

日本の役所手続き

生活の本拠地が海外になる場合、住民票の海外転出が必要になります。
また、海外転出により所得税の納税義務がなくなります。
自治体の役所・役場に行くと、海外転出と合わせて以下のような手続きを行うことができます。
1日あれば終わるので、まとめてやるのがおすすめです。

住民票の海外転出届

マイナンバーカードの利用停止、国民健康保険からの脱退、納税管理人の設定もあわせて行うことになります。

在留届

海外に長期間(2か月?)以上滞在する場合、在留届の提出が義務となります。
オンラインでできますし、大使館から大事なニュースが届くので必ずやるようにしましょう。

国民年金の一時脱退

国民年金から一時脱退することができます。払い続けることもできます。

在外選挙人名簿への登録

自治体の選挙管理委員会に行き、選挙人名簿から名前を消してもらいます。同時に、在外選挙人名簿に名前を登録することで、滞在先から在外投票を行うことができるようになります。
この手続きは出国後に滞在先の大使館で行うこともできます。

運転免許証

国際運転免許証

出国前に日本の警察署に行くことで、1年間有効の国際運転免許証を取得することができます。
ただし、ヨーロッパでは国際運転免許証による運転は入国後6か月までとされていることが多く、国際運転免許証とは別に日本の運転免許証の認証翻訳を求められるケースも多いです。
運転するなら、ヨーロッパの運転免許証を取得することがおすすめです。

ヨーロッパの運転免許証の取得

日本の免許証をもっていて、6か月以上住むことが前提となっている場合、試験等なしでヨーロッパの運転免許証を取得することができます。
入国後6か月以内に申請をしないといけないため、注意しましょう。
詳しくはこちら。

手続き

ウィーンの場合、警察署に行って手続きをします。
事前の予約が必要で、1ヶ月程度予約がとれないこともあるため気をつけましょう。
提出書類はこちら。

  • 日本の免許証の認証翻訳

戸籍謄本の認証翻訳と同様、オーストリア公認の翻訳家に依頼します。
相場はわかりませんが、私の場合は100€でした。相見積もりした方がいいかもしれません。
翻訳してもらったのち、ÖAMTCというところに行って役所提出用のフォーマットにしてもらいます。

  • 医師の所見

指定の医師に検査をしてもらい、問題ないという所見を書いてもらいます。
持病などを聞かれ、簡単な視力測定を行います。

  • Meldezettelのコピー
  • Residence Permit(原本、コピー)
  • パスポートサイズの写真
  • 申請費€90 (キャッシュレス可)
  • パスポート(原本)

ダニワクチン

ヨーロッパのダニにかまれるとTBEという病気にかかるリスクがあります。
日本よりもかなりダニが多い印象です。
ハイキングに行ったり、街中でも茂みに入ったりする場合は必ず接種するようにしましょう。
一回の接種では効果が足りず、1度目の接種から1月後、1年後に接種する必要があります。
接種の次の日は肩が痛むので計画的に。

国際学生証

国際学生証をもっているとヨーロッパの多くの施設で割引を受けることができます。
日本の大学に在籍している場合は日本でしか発行できないため、出国前に手続きしておきましょう。

Author

NAKAO Hiromu

  • Tsuchimatsu Group
  • The University of Tokyo

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渡航報告:Shimizu Group, University of Zurich

Shunsuke Yoshioka

Feb. 15, 2025

京都大学農学研究科の吉岡俊輔です。 2023年11月から2024年11月までの1年間、チューリッヒ大学の清水健太郎先生の研究室に滞在していました。今回はその体験談を記したいと思います。

渡航前・到着直後

受け入れ先に関しては、受け入れ先のPI が共同研究者でもあった清水先生だったので非常にスムーズに話が決まりました。スイスに1年以内の滞在をする場合は、居住許可証が必要ですが、チューリッヒ大のオンラインフォームから必要書類をアップロードして承認されると、チューリッヒ大の事務の方々が後の発行手続きをすべて行ってくれました。もう少し面倒な手続きがいるのかと思っていたのですが、本当にスムーズに必要な書類の準備をしていただき驚きました。現地に到着すると、まず移民局で登録、住居のある市の役所で住民票の登録、現地での保険への加入、スマホの通信の契約などの手続きをすませました。これらについても特に大きなトラブルなく済ませることができました。

現地での生活

スイスではシェアハウスが主流でした。個人の部屋が一室あって、バス・トイレ、キッチンを共有するというタイプです。僕の場合は、大家さんである60代後半の素敵なご夫妻ソーニャ、マーカスさんのご自宅の一室をお借りして、キッチン・バスはシェアという形でした。スイスは特に部屋探しが大変で、部屋を決めるのに何回も内見にいって、数ヶ月もかかるというのが一般的です。僕の場合は、幸運なことにソーニャとのオンライン面接だけで採用されました。ソーニャ曰く、息子さんであるオリバーが「日本人は間違いなくいいやつだから」(??)と言ってくれたのが決め手だったようです。そのため渡航前に部屋を決めることができました。ただ、チューリッヒ大学に長期滞在される方は、まずホテルか清水先生のお知り合いの家に一時滞在してから部屋を探すことになる場合もあるかと思います。

日々の食事は、スーパーで買って自炊をしていました。レストランの食事は5000-6000円以上はかかるので、あまり頻繁に外食はできません。また、日本のように一人でふらっと入れるコンビニや安いチェーン店がないので、自分で作るしかない状況でした。スーパーの食品は比較的安いです(人件費が高いので加工の工程で人の手が入るほど値段が跳ね上がるイメージです)。僕は安いトマト缶やツナ缶を買い込んでパスタをつくったりしていました。お昼は前の日に作った余りものをもっていったり、学食で食べたりしていました。ちなみにチューリッヒ大学の学食は、(スイスにしては)リーズナブルな値段(1食1300円程度)で食べられます。 たまに、ソーニャマーカス夫妻が一緒に晩ごはんを食べようと招待してくれました。週一で息子のオリバーも帰ってきて、いろいろな種類の料理を食べることができました。

チューリッヒも中心部をすこし外れるとのどかな牧場や畑、チューリッヒ湖など自然豊かな場所が多く、ランニングや散歩をするのにぴったりの場所でした。ちなみに、現地では頻繁にマラソン大会が開催されており、僕もラボのメンバーと一緒にチューリッヒマラソンとまた別のマラソンに合計2回参加しました(どちらも10km部門ですが)。ラボのとある人は、二人一組で深夜にスタートし、自転車とランニングで、80kmを翌朝までかけて走り切るというハードなコンペティションにも参加していました。

チューリッヒはトラム(路面電車)が非常に便利で、市内のどこにでも1回の乗り換えで大抵のところは行けます。通学や市内のどこかに出かける際も自動車・自転車などはほぼ必要なく、すべてトラムで完結できます。僕もトラムを使って通学していました。人口が少ないので通学の電車が満員ということはなかったです。

費用については、僕の滞在していた期間はかなり円安の時期でした。円安があまりに進行したタイミングで那須田先生がそれに応じて月の支給額を調整してくださいました。生活費に関しては、経済状況も鑑みて、PIの方々とよく相談して柔軟に対応していただければと思います。
今回の滞在では、KEPLRに関わる多くの方々のご協力とご支援のおかげで、1年間という長期間の滞在が実現しました。本当にありがとうございました。

Author

Shunsuke Yoshioka

  • Nasuda Group
  • Kyoto University

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渡航報告:フランス・Université de Lille

SUDA Ryo

Nov. 26, 2024

2024年6月〜7月の約1ヶ月間、フランス・Université de Lille に留学し、Vincent Castric 博士のご指導の下ハクサンハタザオの自家不和合性に関する研究を行いました。

準備と渡航

2023年6月に日本で行われたキックオフミーティング、および11月にチューリッヒで開催されたキックオフミーティングに参加した際にVincentを交えてディスカッションを行い、日本産のハクサンハタザオを用いた研究をリールで進めることが決まりました。その後はメールでやり取りを行い、春頃には具体的な滞在日程を確定させ、航空券と宿泊先を手配しました。
リールへの移動は、往路はブリュッセル経由、復路はパリ経由で行い、市内へはTGVで移動しました。また、現地での研究に必要なデータは事前にSSDに保存して持参し、追加で必要になったデータについてはVPNで所属研究室に接続して転送しました。

リールでの研究

Vincentの研究室に整備されている解析環境を活用し、日本から持ち込んだゲノムデータの解析を中心に研究を行いました。到着した週の研究室セミナーでこれまでの研究や滞在中の計画について発表し、その後は週1〜2回の頻度でVincentとディスカッションを重ねながら研究を進めました。短い滞在期間ではありましたが、スピード感をもって取り組むことができました。
研究室では解析サーバーの設備が整っており、困った時にはテクニシャンに気軽に相談できるなど、解析を進める上で非常に恵まれた環境でした。研究室が入っている建物では、様々な研究材料を用いて進化生物学を研究しているメンバーが集まって大きな研究グループを作っていました。そのため、研究室セミナーでは多様な研究内容に触れることができ、毎回とても刺激を受けました。また、朝と昼のコーヒータイム、夕方のティータイムには多くのメンバーが休憩室に集まるので交流が盛んで、仲を深めたり気軽に研究について意見を交わしたりすることができました。私が解析を始めると、休憩室のホワイトボードに解析結果を予想する投票が作られるなど、みんなで楽しみながら研究を進める姿勢がとても印象的でした(ちなみに私は大きく予想を外しました)。
7月には、論文の共著者でヨーロッパのハクサンハタザオを研究しているドイツ・Ruhr University BochumのUte Krämer教授らとディスカッションを行いました。これまでの研究内容を共有し、今後の方向性について意見交換を行うなど、とても有意義な機会でした。また、キックオフミーティング以来2回目のヨーロッパ訪問だったので、この際にベルギー、オランダ、ドイツの3カ国を陸路で移動したのも楽しい経験でした。

リールでの生活

キャンパスには緑が多く、メトロに15分ほど乗れば古い街並みが残る中心街を散策できる、とても生活しやすい街でした。サッカーの試合でフランスが勝利した日や祝日には街全体が盛り上がり、その雰囲気を楽しむことができました。留学中は研究室と同じキャンパス内にある大学のInternational Residenceに滞在しました。留学が夏休み期間に重なったため、Residenceの留学生との交流はありませんでしたが、研究室の学生同士の仲が良く、日の長い夕方に研究室の建物の外でサッカーの試合を観戦したり、キャンパスでビールを飲んだりしました。現地の食事はとても美味しかったのですが、リール名物のチーズは匂いが強く、建物に持ち込むのは止められました。大学の学食もとても美味しいものでしたが、支払いに学生証が必要だったので友人に建て替えてもらっていました。現地ではタッチ決済での支払いが多かったので、それ以外で現金を使う場面はほとんどありませんでした。

キャンパス内の様子とリール旧市街のGénéral de Gaulle広場

リールは交通の便が良く、週末には周辺の地域に足を伸ばし、美しい街並みを訪れたり、自然公園で草原の花々を楽しんだりすることができました。特に平地の草原で日本ではより高標高で見られるような植生を観察することができ、とても興味深い体験でした。

Régional des caps et marais d'Opale自然公園の草原で見られた花々。

現地ではほとんどの場面では英語が通じましたが、フランス語が必要な場面では友人や通りがかりの人が助けてくれました。多くの方々の親切に支えられながら生活を送ることができたと感じています。また、キャンパスや街ではすれ違う人と挨拶を交わしたり、鉄道や飛行機で乗り合わせた人から話しかけられたりすることも多く、日本に比べて知らない人とのコミュニケーションが頻繁にある点が印象に残りました。滞在期間が短かったこともあり、研究や日常生活の中で積極的に質問をしたり、発信したりすることの大切さを強く感じました。

おわりに

1ヶ月というあっという間の滞在期間ではありましたが、Vincentをはじめ現地の研究室メンバーに支えられながら、充実した研究生活を送ることができました。今後はこの経験を通して学んだことを活かし、留学中の解析で得られた結果についてもさらに研究を深めていきたいと思っています。

Author

SUDA Ryo

  • Master's course student
  • Tsuchimatsu Group
  • The University of Tokyo
  • Environmental Responses
  • Multi-omics
  • Field science

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