Activities All Activities Activities

渡航報告:Shimizu Group, University of Zurich

Shunsuke Yoshioka

Feb. 15, 2025

京都大学農学研究科の吉岡俊輔です。 2023年11月から2024年11月までの1年間、チューリッヒ大学の清水健太郎先生の研究室に滞在していました。今回はその体験談を記したいと思います。

渡航前・到着直後

受け入れ先に関しては、受け入れ先のPI が共同研究者でもあった清水先生だったので非常にスムーズに話が決まりました。スイスに1年以内の滞在をする場合は、居住許可証が必要ですが、チューリッヒ大のオンラインフォームから必要書類をアップロードして承認されると、チューリッヒ大の事務の方々が後の発行手続きをすべて行ってくれました。もう少し面倒な手続きがいるのかと思っていたのですが、本当にスムーズに必要な書類の準備をしていただき驚きました。現地に到着すると、まず移民局で登録、住居のある市の役所で住民票の登録、現地での保険への加入、スマホの通信の契約などの手続きをすませました。これらについても特に大きなトラブルなく済ませることができました。

現地での生活

スイスではシェアハウスが主流でした。個人の部屋が一室あって、バス・トイレ、キッチンを共有するというタイプです。僕の場合は、大家さんである60代後半の素敵なご夫妻ソーニャ、マーカスさんのご自宅の一室をお借りして、キッチン・バスはシェアという形でした。スイスは特に部屋探しが大変で、部屋を決めるのに何回も内見にいって、数ヶ月もかかるというのが一般的です。僕の場合は、幸運なことにソーニャとのオンライン面接だけで採用されました。ソーニャ曰く、息子さんであるオリバーが「日本人は間違いなくいいやつだから」(??)と言ってくれたのが決め手だったようです。そのため渡航前に部屋を決めることができました。ただ、チューリッヒ大学に長期滞在される方は、まずホテルか清水先生のお知り合いの家に一時滞在してから部屋を探すことになる場合もあるかと思います。

日々の食事は、スーパーで買って自炊をしていました。レストランの食事は5000-6000円以上はかかるので、あまり頻繁に外食はできません。また、日本のように一人でふらっと入れるコンビニや安いチェーン店がないので、自分で作るしかない状況でした。スーパーの食品は比較的安いです(人件費が高いので加工の工程で人の手が入るほど値段が跳ね上がるイメージです)。僕は安いトマト缶やツナ缶を買い込んでパスタをつくったりしていました。お昼は前の日に作った余りものをもっていったり、学食で食べたりしていました。ちなみにチューリッヒ大学の学食は、(スイスにしては)リーズナブルな値段(1食1300円程度)で食べられます。 たまに、ソーニャマーカス夫妻が一緒に晩ごはんを食べようと招待してくれました。週一で息子のオリバーも帰ってきて、いろいろな種類の料理を食べることができました。

チューリッヒも中心部をすこし外れるとのどかな牧場や畑、チューリッヒ湖など自然豊かな場所が多く、ランニングや散歩をするのにぴったりの場所でした。ちなみに、現地では頻繁にマラソン大会が開催されており、僕もラボのメンバーと一緒にチューリッヒマラソンとまた別のマラソンに合計2回参加しました(どちらも10km部門ですが)。ラボのとある人は、二人一組で深夜にスタートし、自転車とランニングで、80kmを翌朝までかけて走り切るというハードなコンペティションにも参加していました。

チューリッヒはトラム(路面電車)が非常に便利で、市内のどこにでも1回の乗り換えで大抵のところは行けます。通学や市内のどこかに出かける際も自動車・自転車などはほぼ必要なく、すべてトラムで完結できます。僕もトラムを使って通学していました。人口が少ないので通学の電車が満員ということはなかったです。

費用については、僕の滞在していた期間はかなり円安の時期でした。円安があまりに進行したタイミングで那須田先生がそれに応じて月の支給額を調整してくださいました。生活費に関しては、経済状況も鑑みて、PIの方々とよく相談して柔軟に対応していただければと思います。
今回の滞在では、KEPLRに関わる多くの方々のご協力とご支援のおかげで、1年間という長期間の滞在が実現しました。本当にありがとうございました。

Author

Shunsuke Yoshioka

  • Nasuda Group
  • Kyoto University

More from this author

International Marchantia Workshop 2024 Report

TSUCHIKANE Yuki

Jan. 15, 2025

The International Marchantia Workshop 2024 was held from November 18th to 21st, 2024, at the RCCBC Conference Center in Hiroshima, Japan. This workshop was co-organized by Professor Takayuki Kohchi (Kyoto University), the Principal Investigator (PI) of the KEPLR project.

The workshop had a total of 192 participants, with:
• 105 attending in person (69 domestic and 36 international participants)
• 87 attending online (49 domestic and 38 international participants)

The KEPLR project invited 8 international participants, including Professor Ueli Grossniklaus, as well as postdoctoral fellows and graduate students from the Grossniklaus, Weijers, Feng, and Berger groups.

Among the speakers were:
• Ueli Grossniklaus (KEPLR Vice-Director, University of Zurich)
• Minako Ueda (KEPLR PI, Tohoku University)
• Tetsuya Hisanaga (KEPLR Junior PI, Nara Institute of Science and Technology)

This workshop highlighted KEPLR’s strong international collaboration and contributions to advancing Marchantia research.

Author

[Co-Hosted by Our Project] Cold Spring Harbor Asia, Awaji, International Symposium (May 18–22, 2025)

TSUCHIKANE Yuki

Dec. 5, 2024

We are pleased to announce that the Cold Spring Harbor Asia, Awaji, International Symposium will be held from Sunday, May 18, to Thursday, May 22, 2025. This symposium is co-hosted by Prof. Takeshi Izawa (The University of Tokyo), representing the topic “Genomic dynamics underlying the plastic hermaphroditism in plants (https://www.ige.tohoku.ac.jp/prg/flower/)”, and KEPLR.

We warmly invite everyone to participate!


Dates:
Sunday, May 18 – Thursday, May 22, 2025

Venue:
Awaji Yumebutai International Conference Center
1 Yumebutai, Awaji City, Hyogo Prefecture, 656-2301, Japan

For more details, visit:
Plant Reproductive Development and Genomics, Awaji, Japan (https://www.csh-asia.org/?content/2653)

渡航報告:フランス・Université de Lille

SUDA Ryo

Nov. 26, 2024

2024年6月〜7月の約1ヶ月間、フランス・Université de Lille に留学し、Vincent Castric 博士のご指導の下ハクサンハタザオの自家不和合性に関する研究を行いました。

準備と渡航

2023年6月に日本で行われたキックオフミーティング、および11月にチューリッヒで開催されたキックオフミーティングに参加した際にVincentを交えてディスカッションを行い、日本産のハクサンハタザオを用いた研究をリールで進めることが決まりました。その後はメールでやり取りを行い、春頃には具体的な滞在日程を確定させ、航空券と宿泊先を手配しました。
リールへの移動は、往路はブリュッセル経由、復路はパリ経由で行い、市内へはTGVで移動しました。また、現地での研究に必要なデータは事前にSSDに保存して持参し、追加で必要になったデータについてはVPNで所属研究室に接続して転送しました。

リールでの研究

Vincentの研究室に整備されている解析環境を活用し、日本から持ち込んだゲノムデータの解析を中心に研究を行いました。到着した週の研究室セミナーでこれまでの研究や滞在中の計画について発表し、その後は週1〜2回の頻度でVincentとディスカッションを重ねながら研究を進めました。短い滞在期間ではありましたが、スピード感をもって取り組むことができました。
研究室では解析サーバーの設備が整っており、困った時にはテクニシャンに気軽に相談できるなど、解析を進める上で非常に恵まれた環境でした。研究室が入っている建物では、様々な研究材料を用いて進化生物学を研究しているメンバーが集まって大きな研究グループを作っていました。そのため、研究室セミナーでは多様な研究内容に触れることができ、毎回とても刺激を受けました。また、朝と昼のコーヒータイム、夕方のティータイムには多くのメンバーが休憩室に集まるので交流が盛んで、仲を深めたり気軽に研究について意見を交わしたりすることができました。私が解析を始めると、休憩室のホワイトボードに解析結果を予想する投票が作られるなど、みんなで楽しみながら研究を進める姿勢がとても印象的でした(ちなみに私は大きく予想を外しました)。
7月には、論文の共著者でヨーロッパのハクサンハタザオを研究しているドイツ・Ruhr University BochumのUte Krämer教授らとディスカッションを行いました。これまでの研究内容を共有し、今後の方向性について意見交換を行うなど、とても有意義な機会でした。また、キックオフミーティング以来2回目のヨーロッパ訪問だったので、この際にベルギー、オランダ、ドイツの3カ国を陸路で移動したのも楽しい経験でした。

リールでの生活

キャンパスには緑が多く、メトロに15分ほど乗れば古い街並みが残る中心街を散策できる、とても生活しやすい街でした。サッカーの試合でフランスが勝利した日や祝日には街全体が盛り上がり、その雰囲気を楽しむことができました。留学中は研究室と同じキャンパス内にある大学のInternational Residenceに滞在しました。留学が夏休み期間に重なったため、Residenceの留学生との交流はありませんでしたが、研究室の学生同士の仲が良く、日の長い夕方に研究室の建物の外でサッカーの試合を観戦したり、キャンパスでビールを飲んだりしました。現地の食事はとても美味しかったのですが、リール名物のチーズは匂いが強く、建物に持ち込むのは止められました。大学の学食もとても美味しいものでしたが、支払いに学生証が必要だったので友人に建て替えてもらっていました。現地ではタッチ決済での支払いが多かったので、それ以外で現金を使う場面はほとんどありませんでした。

キャンパス内の様子とリール旧市街のGénéral de Gaulle広場

リールは交通の便が良く、週末には周辺の地域に足を伸ばし、美しい街並みを訪れたり、自然公園で草原の花々を楽しんだりすることができました。特に平地の草原で日本ではより高標高で見られるような植生を観察することができ、とても興味深い体験でした。

Régional des caps et marais d'Opale自然公園の草原で見られた花々。

現地ではほとんどの場面では英語が通じましたが、フランス語が必要な場面では友人や通りがかりの人が助けてくれました。多くの方々の親切に支えられながら生活を送ることができたと感じています。また、キャンパスや街ではすれ違う人と挨拶を交わしたり、鉄道や飛行機で乗り合わせた人から話しかけられたりすることも多く、日本に比べて知らない人とのコミュニケーションが頻繁にある点が印象に残りました。滞在期間が短かったこともあり、研究や日常生活の中で積極的に質問をしたり、発信したりすることの大切さを強く感じました。

おわりに

1ヶ月というあっという間の滞在期間ではありましたが、Vincentをはじめ現地の研究室メンバーに支えられながら、充実した研究生活を送ることができました。今後はこの経験を通して学んだことを活かし、留学中の解析で得られた結果についてもさらに研究を深めていきたいと思っています。

Author

SUDA Ryo

  • Master's course student
  • Tsuchimatsu Group
  • The University of Tokyo
  • Environmental Responses
  • Multi-omics
  • Field science

Seminar at the University of Tokyo’s Faculty of Agriculture

TSUCHIKANE Yuki

Oct. 28, 2024

A seminar featuring Professor Kentaro Shimizu, PI of KEPLR, was held at the University of Tokyo’s Faculty of Agriculture.

• Date and Time: Friday, October 18, 16:00–17:30
• Location: Lecture Room 7, 1st Floor, Building 1, Faculty of Agriculture
• Speaker: Prof. Kentaro Shimizu
• Title: From Field Environments of Arabidopsis to the 10+ Wheat Genome Project

要旨:シロイヌナズナやイネのゲノム解読から20年近くを経て、ゲノムサイズが15GBにもなる異質六倍体パンコムギのゲノムが解読され、機能解析やオミクス解析が容易になった。コムギ10+ゲノムプロジェクトの第1期では、日本を代表する品種農林61号など世界の近代品種のde novoゲノムアセンブリなどを報告した。第2期では、汎トランスクリプトーム解析(White et al. bioRxiv)やゲノムワイドな選択の解析を行ってきた。そして、農林61号のアセンブリと東アジアのコムギ遺伝資源を活用して、有性生殖や病原抵抗性に関わる量的遺伝子座の解析を進めている。さらに、近隣個体の遺伝子型を考慮したNeighbor GWAS法を野外環境のシロイヌナズナに適用し、遺伝子型の混合によって昆虫食害を減少させる手法を開発した(Sato et al. Nature Communications 2024)。今後の可能性などについても論じたい。