Activities Overseas Reports

渡航報告:フランス・Université de Lille

SUDA Ryo

Nov. 26, 2024

2024年6月〜7月の約1ヶ月間、フランス・Université de Lille に留学し、Vincent Castric 博士のご指導の下ハクサンハタザオの自家不和合性に関する研究を行いました。

準備と渡航

2023年6月に日本で行われたキックオフミーティング、および11月にチューリッヒで開催されたキックオフミーティングに参加した際にVincentを交えてディスカッションを行い、日本産のハクサンハタザオを用いた研究をリールで進めることが決まりました。その後はメールでやり取りを行い、春頃には具体的な滞在日程を確定させ、航空券と宿泊先を手配しました。
リールへの移動は、往路はブリュッセル経由、復路はパリ経由で行い、市内へはTGVで移動しました。また、現地での研究に必要なデータは事前にSSDに保存して持参し、追加で必要になったデータについてはVPNで所属研究室に接続して転送しました。

リールでの研究

Vincentの研究室に整備されている解析環境を活用し、日本から持ち込んだゲノムデータの解析を中心に研究を行いました。到着した週の研究室セミナーでこれまでの研究や滞在中の計画について発表し、その後は週1〜2回の頻度でVincentとディスカッションを重ねながら研究を進めました。短い滞在期間ではありましたが、スピード感をもって取り組むことができました。
研究室では解析サーバーの設備が整っており、困った時にはテクニシャンに気軽に相談できるなど、解析を進める上で非常に恵まれた環境でした。研究室が入っている建物では、様々な研究材料を用いて進化生物学を研究しているメンバーが集まって大きな研究グループを作っていました。そのため、研究室セミナーでは多様な研究内容に触れることができ、毎回とても刺激を受けました。また、朝と昼のコーヒータイム、夕方のティータイムには多くのメンバーが休憩室に集まるので交流が盛んで、仲を深めたり気軽に研究について意見を交わしたりすることができました。私が解析を始めると、休憩室のホワイトボードに解析結果を予想する投票が作られるなど、みんなで楽しみながら研究を進める姿勢がとても印象的でした(ちなみに私は大きく予想を外しました)。
7月には、論文の共著者でヨーロッパのハクサンハタザオを研究しているドイツ・Ruhr University BochumのUte Krämer教授らとディスカッションを行いました。これまでの研究内容を共有し、今後の方向性について意見交換を行うなど、とても有意義な機会でした。また、キックオフミーティング以来2回目のヨーロッパ訪問だったので、この際にベルギー、オランダ、ドイツの3カ国を陸路で移動したのも楽しい経験でした。

リールでの生活

キャンパスには緑が多く、メトロに15分ほど乗れば古い街並みが残る中心街を散策できる、とても生活しやすい街でした。サッカーの試合でフランスが勝利した日や祝日には街全体が盛り上がり、その雰囲気を楽しむことができました。留学中は研究室と同じキャンパス内にある大学のInternational Residenceに滞在しました。留学が夏休み期間に重なったため、Residenceの留学生との交流はありませんでしたが、研究室の学生同士の仲が良く、日の長い夕方に研究室の建物の外でサッカーの試合を観戦したり、キャンパスでビールを飲んだりしました。現地の食事はとても美味しかったのですが、リール名物のチーズは匂いが強く、建物に持ち込むのは止められました。大学の学食もとても美味しいものでしたが、支払いに学生証が必要だったので友人に建て替えてもらっていました。現地ではタッチ決済での支払いが多かったので、それ以外で現金を使う場面はほとんどありませんでした。

キャンパス内の様子とリール旧市街のGénéral de Gaulle広場

リールは交通の便が良く、週末には周辺の地域に足を伸ばし、美しい街並みを訪れたり、自然公園で草原の花々を楽しんだりすることができました。特に平地の草原で日本ではより高標高で見られるような植生を観察することができ、とても興味深い体験でした。

Régional des caps et marais d'Opale自然公園の草原で見られた花々。

現地ではほとんどの場面では英語が通じましたが、フランス語が必要な場面では友人や通りがかりの人が助けてくれました。多くの方々の親切に支えられながら生活を送ることができたと感じています。また、キャンパスや街ではすれ違う人と挨拶を交わしたり、鉄道や飛行機で乗り合わせた人から話しかけられたりすることも多く、日本に比べて知らない人とのコミュニケーションが頻繁にある点が印象に残りました。滞在期間が短かったこともあり、研究や日常生活の中で積極的に質問をしたり、発信したりすることの大切さを強く感じました。

おわりに

1ヶ月というあっという間の滞在期間ではありましたが、Vincentをはじめ現地の研究室メンバーに支えられながら、充実した研究生活を送ることができました。今後はこの経験を通して学んだことを活かし、留学中の解析で得られた結果についてもさらに研究を深めていきたいと思っています。

Author

SUDA Ryo

  • Master's course student
  • Tsuchimatsu Group
  • The University of Tokyo
  • Environmental Responses
  • Multi-omics
  • Field science

More from this author