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渡航報告:オランダ・Wageningen University & Research

SUZUKI Hidemasa

Sep. 1, 2024

筆者は2024年6–8月に85日間オランダに留学した。本稿ではその経緯と現地での体験を報告する。

渡航準備

 筆者は2023年に東北大学 植田研に籍を移し、新たなテーマで研究を始めた。研究対象の植物は筆者にもラボとしても初めての種であり、同分野で先行しているオランダ・Wageningen University & Research (WUR)のDolf Weijers教授らの元で実験技術を学ぶこととなった。渡航期間はビザ不要の90日間を上限とし、日本での実験が一段落する2024年6月からとした。
 渡航の準備はパスポートの更新・必要書類の作成・航空券の手配・住居の確保・保険の加入・植物の世話の依頼・荷造りが主で、2ヶ月ほどを要した。ネット環境には注意を払い、PC等は事前にeduroamを設定し、スマホも海外での利用に備えた。また、東北大学のVPNにも大いに助けられた。

オランダでの生活

 筆者にとっては5年ぶりの海外であったが、色々なことが一段と便利になったように感じた。まず、日常的な買い物はもちろんのこと、公共交通機関や公衆トイレに至るまで、すべての支払いがVisaのタッチ決済で済んだ。オランダ語の案内もGoogleレンズで即座に訳せるし、Google Mapには乗り継ぎ検索やチケット購入などで随分とお世話になった。実地で試す機会はなかったが、日常会話ならスマホに入れたChatGPTが難なく同時通訳してくれそうである。異国の地でもクレカ・スマホ・パスポートさえ持てば大抵のことはなんとかなるように思う反面、依存が過ぎている感も否めない。
 筆者の滞在したWageningenはネーデルライン川流域の緑豊かな街であった。川辺のDe Wageningse Geulでは足元の悪さに幾度となく行く手を阻まれたが、8月には水が引き、豊かな自然が垣間見えた(図1)。少し足を延ばして訪れたDe Hoge Veluwe 国立公園では、広大な園内を自由に散策でき、森林、草原、砂原とさまざまな環境を楽しめた(図2)。日本とは異なる植生に触れるまたとない機会となり、その方面への興味も深まった。

  • 図1. Wageningen 近郊の自然
    A. 川辺の湿原地帯。B. 自生していたブラックベリー。よく熟した実はすばらしく甘い。2 mあまりの茂みをつくり、甘い香りを漂わせていた。C. デューベリー。甘酸っぱく野趣に富み、ブラックベリーよりも小さいので種子の食感が際立つ。

  • 図2. De Hoge Veluwe国立公園
    A. 群生するヒース(手前)と砂原(奥)。B. ヒースの花(8月末)。C. 周縁部には針葉樹林が広がり、林床は低木のブルーベリーに覆われていた(6月末)。

オランダでの研究

 WUR(図3)では、研究者間の活発なコミュニケーションが印象的であった。生物、物理、化学など複数のラボが連携し、多角的な研究を効率的に進めている。日常的な和やかな交流が、スムーズな共同作業を支えているように思われた。
 筆者自身は語学力の不足もあって周囲に随分と迷惑をかけたが、どうにか当初の目的を達成できた。慣れない環境のなか、気にかけ助けてくださった多くの方には感謝に堪えない。8月になると休暇で人が減り、教わる機会も減ってしまった反面、顕微鏡をなかば独占して日本では手がだせずにいた観察を存分に試せた。ちょうどその頃発表された新規蛍光試薬を試すこともでき、時機を得た留学であった。

  • 図3. Wageningen University & Research
    A. 広々としたキャンパスに立法体のビルが点在していた。B, C. お世話になったビル「HELIX」。

おわりに

 今回の留学を通じて、技術の発展を実感するとともに、人の親切が身に沁みた。今後、国際交流がますます盛んになるなかで、受けた親切を別の形で返していけるよう努めていきたい。帰国した今、学んだすべてを生かし、決意も新たに研究に取り組んでいきたい。

Author

SUZUKI Hidemasa

  • Assistant Professor
  • Ueda Group
  • Tohoku University
  • Weijers G
  • Wageningen University
  • Reproductive Development
  • Imaging

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